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第9回 後払いOKの「無人販売所」

空前のキャンプブームにつき

 2020年、新型コロナウィルスが流行りだしてからというもの、世の中の潮流が劇的に変わってきていることは誰しも疑わないことだと思います。中でも休日の新たな過ごし方として、三密を回避しながら楽しめる「キャンプ」が空前のブームになっています。私が暮らしている地域でも、キャンプ場に向かう車の渋滞ができている話や、とあるキャンプ場が過去最高の売り上げを叩き出したという話を聞くあたり、そのブームの訪れを近くで感じています。

 私自身、作った薪を販売するためにはじめた無人販売でも、ここ数ヶ月売り上げが好調で、2020年8月が4千円、9月が1万2500円、10月が2万5500円、11月が3万2500円、12月が5万9000円と、絵に書いたような右肩上がりとなっており、薪はキャンプシーズンの夏に売れるものであると勝手に信じていた私は、「何が起きている?」と驚きました。

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 よくよく考えてみれば、薪は煮炊きに使うだけではなく暖をとるためにも使われます。気温が低くなる秋~冬に売れるのは当然といえば当然のことでした。

 でも一般的にはキャンプのオフシーズンであるはずのこの寒い時期にそれだけの需要があるということは、やはり一大ブームが押し寄せているあかしなのだと思います。都市部から大勢のお客さんが訪れる事による感染拡大のリスクが少し心配ではありつつも、スモールビジネスに挑戦している林業家としてこの波には引き続き乗っていく必要があります。


無人販売でのこだわり

 私がやっている無人販売は非常に素っ気ない店構えではありますが、これまでに情報発信をしたり、たまにメディアでも取り上げられたりしてきたので、少しずつですが認知が広がってきました。Googleマップにも、どなたかが売り場の場所を登録してくださっていましたし、原付免許取り立ての高校生がこの場所を目的地に訪れてくれるまでになりました(笑)。

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 ここ最近で売り上げが伸びているのは、間違いなくキャンプブームの影響だとは思いますが、継続して行ってきたことによる蓄積の影響も少しはあるのかなと思います。

 しばらく続けて来た無人販売の中で、私が一つだけこだわってきたことがあります。それは、「防犯対策をしない」ということです。我ながら無人販売はすごいビジネスだと思うのですが、これは事業者と顧客との間に信頼関係がなければ絶対に成立しないビジネスです。ですから、まずは発信者である事業者が顧客のことを100%信頼している態度を示さなければなりません。私が少しでもお客様のことを信頼していない素振りを見せればすぐにほころびが生じて続けられなくなるという確信がありました。

 だから、代金を投入するのは無防備などんぶり一つですし、防犯カメラを設置したり、口うるさい注意喚起の張り紙をしたりもしてきませんでした。

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無人販売の問題点

 大変ありがたいことに、2020年11月まで代金の回収率が100%を下回ることはありませんでした。実にオープン以来1年3ヶ月のことで、これは本当に驚くべきことです。しかし同年の12月、代金回収率が初めて100%を下回りました。具体的にいいますと、薪6千円分の代金が未収の状態になっているのです。薪をどなたかが持っていってくださったのですが、その代金を私が受け取れていない状況となっています。
 
 無人販売は、お客様との対面でのやり取りを放棄し、「代金をきちんと受け取る」という事業者としては当たり前のことをおろそかにした、ある意味で欠陥のある販売形態なので、未収金が発生することは想定していましたし、そのことへの責任はこのような方法を選んでいる私自身にあると考えています。

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 それに、どのような経緯で未収金が発生したのかは、もはや誰にも分からないわけなので、私としては間違っても誰かを責めるようなことはしたくありません。もしかしたら、薪を持っていってくださった方がうっかり代金を置き忘れてしまったのかもしれませんし、手持ちがなくて今度来たときに払うつもりだったのかもしれません。はじめから払う気がなかったのかもしれませんし、払ったけど、別の誰かが代金をネコババしちゃったのかもしれません。可能性としては色んなパターンが考えられますが、真相がはっきりとわからない以上は、誰かを責めるようなことはできないです。

 ただ、今回のことで人からアドバイスを受けたことの中に、「今のままだと泥棒を作っちゃうことになるからそのことはちゃんと考えたほうがいい」というご指摘がありました。確かに、私のせいで世の中に泥棒を輩出してしまうのは全く本意ではありません。


「後払いOK」にします

せっかくイシタカ山の薪を求めてくれている人を泥棒にしたくはありませんので、何かいい方法はないかと考えました。そこで思いついたのが、「後払いOK制度」です。

 どういうことかというと、これまでどおり、商品の値段はきちんと決まっています。それに対して、代金を払える人は従来どおりその場で払っていただきます。何らかの理由で払うことができない人は後払いをOKとし、その際の支払い期限は特に設けません。いつか払ってくれれば御の字です。したがって実質的に、絶対に払いたくない人は払わなくていいということになります。店主である私がそういっているので、仮に未収金が発生したところでこれは泥棒の仕業にはなりません。

 あとは、代金のネコババ対策ですが、代金を投入する仕組みのところをもう少し厳重にする必要があります。本当は、これまで通りどんぶりでいきたいのですが、背に腹は代えられません。内部と外部を遮断したBOXを用意することにします。

 この「後払いOK制度」にはきっと色々な意見があるはずです。ただ、このようにすることで、なにより私自身が気持ち良く、心穏やかにいられますお客様を信頼したままでいられます。それってめちゃくちゃ大事なことです。無人販売は是非これからも続けていきたいので。もしかしたら、お客様にとってもそちらの方がなんとなく気持ち良いのかもと考えたりします。

 ともかく、とりあえずためしにやってみることにします。何事もやってみなければわかりません。何か問題が起きればその都度修正していくことにしましょう。

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イシタカ
28歳のきこり/山主。神奈川県の水源地域、山北町で取得したボサ山を自力で整備しながら副業自立型の小さな林業を実践・発信していきます。林業、気安くオススメはしませんが格好いいところ見せたいとは思います。twitter ID:@ishidatakahisa
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東京・神保町にある、文学・芸術を中心とした書籍と各種学校案内書を発行する出版社です。犀🦏のマークが目印です。